私たちの理念

むしばくらぶは、半世紀以上前、当時学生であった九州歯科大学13期生、岩井貞夫先生が荒れた校風と大学の未来を憂慮し、「むし(無私)の心」で社会に貢献するため設立された、ボランティア団体です。一度は部活動としての存続が危ぶまれたものの、47期生の年縄壮夫先生が前顧問小林繁教授の元、再興されて以来、地元北九州でのボランティア活動を行い続けてきました。今現在は、多くの部員を抱え、歯科公衆衛生、障碍者福祉を中心とした活動を通して、多くのことを学び、歯科医療人としての人間性を磨く機会を頂いております。今後とも、「むし(無私)の心」を忘れることなく、地元北九州でのボランティア活動に邁進していく次第です。

文責 2014年度幹部

むしばくらぶの歴史

-誕 生-

昭和36(1961)13期生が進学課程の学生であった時、クラス費余剰金の使用目的で話し合った結果、岩井貞雄(大13)の提唱で、30余名の学生が名を連ね、「無私の心で社会に奉仕する者の集い(無私派くらぶ)」の、むしばくらぶ として創設された。当時の会則は「本会は会員相互の親和結束の下に、歯科医学生として社会に奉仕し、同時に、将来より良き歯科医としての人格の向上を計ることを目的として活動するときのみ、その存在を全会員は確認する」と記されている。その後は必要に応じて、登録学生が離島の歯科診療、寝たきり老人の無料往診治療、施設の訪問診療や街頭募金を実施していたが、昭和43年に「クラブ活動」として組織作りをした時からは、附属歯科衛生学院の学生も加えて、計画的・持続的な活動を開始した。



-当時の活動-

訪問施設担当組織として、年間を通して担当施設には週に一度以上は出かけては、施設の希望する手伝いを行い、子供達とも親しくなった。当時の担当施設は、盲児担当班(当時)-八幡区洗心学園、精薄児担当班(当時)-小倉区あすなろ学園、肢体不自由児班(当時)-小倉区足立学園の3つがあった。昭和50年前後は双葉学園(養護施設)、小池学園(精薄児施設)が増え5施設となった。その他、以下のような活動を行なった。


・文集「息吹」の発行 (1968-78)

施設児童の詩・俳句・文章を集めた文集で、施設

の子供たちが社会の人々から特殊視されない元気な明るい子供として受け入れられるようにと願いを込めて、昭和43年の創刊号より53年の第8号まで発行、50年には保母・指導員さん達の原稿を集めた別冊を発行した。文集は、九州内の学校・各種施設・図書館・官公庁・関係諸団体に無料配布した。


・チャリティ・コンサート (1964-69)

 本学のブルー・ノーツやサニー・ボーイズ、八幡大学・北九州大学・西南女学院短期大学等の音楽クラブの全面的協力を得て、毎年12月に小倉市民会館でチャリティ・コンサートを開催した。毎回満員の盛況でその収益金は市内の施設が行う諸行事の補助金として寄付をし、その全ての行事に部員が参加した。これらのコンサートは計5回開催され、毎回市内の各種施設の子供たちも多数招待し、第5回では、自主制作映画を上映した。


・自主映画製作 (1969)

「かたつむり歩きなさい」と「小さな足大きな夢」2本の自主映画作成した。精神薄弱児(当時)と肢体不自由児(当時)の社会参加の可能性と理解を説明するための16㎜映画を、会員の手で作成した。フジフィルムより映写機を借り、部員が施設に寝泊りをしてそれぞれ約1ヶ月かけて撮影し、自分たちの手で編集し、映写資格も取得して、学校・施設・会社や公民館で上映し、子供たちの理解と社会参加を訴えていった。


・歳末助け合い街頭募金

毎年12月には 小倉駅前・魚町銀天街・黒崎商店街・八幡駅前で歳末助け合い街頭募金を実施した。この募金活動には部員ではない九歯大生や衛生学院生が多数参加した。


・市内ボランティアサークル連絡会結成

 昭和51年、青い鳥、あしの会、北九大ワークキャンプ、樹の子の会、青年赤十字奉仕団、立ち上がろう会、ヤングボランティアサークルと連絡会を結成した。さらに北九州市内の学生ならびに社会人ボランティアサークルとの交流が盛んとなり、昭和52年のわたぼうしコンサートの運営にも関与した。

 

-活動休止と再結成-

 昭和61年、部員不足を理由にむしばくらぶはその活動を休止した。そして約十年後の平成74月に年縄壮夫(大47)が部長となり、活動を再開した。再結成時の部員は10名足らずであり、主に小倉南区にある知的障害児施設あすなろ学園や門司区にある門司障害者地域活動センターに訪問し、利用者に対するブラッシング指導や、交流を主としたボランティア活動を展開していった。その後、部員数の増加とともに、活動も拡大していき、6年後の平成13年には会員数40名を超える大所帯となっていた。

 


-最盛期-

 その後も部位員数の増加は止まらず、平成23年度の時点で60名を超えている。定期的な活動として、はばたきブラッシング活動(門司障害者地域活動センター)、あすなろブラッシング活動(あすなろ学園)

を主催し、交流を図る元気の会やトトロの会をサポートしている。またその他の活動として、北九州市立大学との共催により音楽祭を開催したり、先天性魚鱗癬の会とのキャンプ活動、グリーフケアの会(流産や病気などで子供を亡くされたご家族の会)のサポート、被災地への歯ブラシ支援、東北ボランティア活動、スペシャルオリンピックス支援、保育所での虫歯予防の啓蒙活動など様々な活動を展開しており、クラブの組織形態とともに充実してきている。しかも平成22年度より開設された口腔保健学科の学生も多数在籍しており、歯科医師と歯科衛生士のいわゆる歯科医療者として、どのように活動していくかを自覚できるクラブとして、その役割を果たしつつある。今後の更なる活躍が期待される。



-今後の展望-

 2014年に九州歯科大学が創立百周年を迎える中、むしばくらぶは五十三年目を迎えることとなる。途中で活動が休止していたとはいえ、半世紀以上も先輩方の「奉仕の心」が後輩に受け継がれているということは、非常に感慨深い。しかもその部員数が増大しているということは、つまりは「奉仕の心」が拡大しているということである。このことは医療人としてはもちろんのこと、人間として非常に重要なことである。

 そのような中、現在むしばくらぶに一つ欠点を挙げるとするならば、平成9年9月に新生むしばくらぶを応援する為に創立者岩井貞雄を会長としてOB会結成されたが、非常に残念なことに現在活動を休止していることである。よって今後の展望としては、まずOB会を活性化し、OBネットワークを確立することである。そして現役部員に対して物理的にも精神的にもサポートができる環境を築きあげることである。せっかく継承されてきた「奉仕の心」を、もっと具体的にかつ現実的に彼らに届けることに意義があると考える。

 「弱者のために・・・」は人間のセオリー、「患者のために・・・」は医療者のセオリー、「後輩のために・・・」は九州歯科大学のセオリーである。この常識は永遠に残したいものである。

 

安増惇夫(20)、原野 望(大51